こんにちは。慶應義塾體育會端艇部名動画集部門主将の、132期の田上諒です。
画像は僕にとって非常に思い出深い、去年の夏に記録された沈動画の一幕です。何故か再生回数が間もなく1万回に到達しそうで、その瞬間を密かに心待ちにしています。
沈動画の美味しがりはこの辺にして、いよいよ僕にもラストライフを書く時が来ました。引退される先輩方のラストライフを読みながら、自分はこういうことを書いてみようかな、という想像を膨らませていた頃が懐かしいです。いよいよその瞬間が訪れた訳ですが、当時練っていた構想は見事に全て忘れ去ってしまったので、今の僕の思いの丈を率直に綴らせていただければなと思います。ですが、引退当日の後輩達へ向けたスピーチが思った以上に長くなりすぎたので、今回は同期のものをこまめにチェックしながら、程よい分量にできればと思います。
今まで想像もしていなかった「引退」という現実。ラストレースから一夜明けた11月1日、丸々二年間お世話になったベッドの撤収作業に勤しむ傍らこのライフを書いているのですが、なかなかその現実を受け入れられていない自分がいます。ただ、どうにも言葉にし難いフワフワした心持ちの中、荷物一つ一つを段ボールに詰める度に、長かった現役生活のその時々の想いは鮮明に蘇ってきます。
オールを握り始めてからの7年間は、正直辛いことだらけでした。部内の競争に負け、他校に負け、自分のことを益々信じてやれなくなる。そして自分自身の中に余裕がなくなり、ボートも人間関係も上手くいかなくなる。僕の現役生活はこれの繰り返しだったと思います。
ラストシーズンも早慶戦第二エイトで惨敗し、自分が乗れなかった対校エイトは5年ぶりに勝利。そして最後のインカレでも対校エイトでの出場は叶わずと、最後まで苦悩の連続でした。
だからこそ、最終日のレースは自分にとって重要な意味を持つものとなりました。今までずっと勝負所の弱さに苦しめられてきた中で、去年の自身の順位を超えることができた嬉しさ、今回のクルーが出せるベストのタイム、パフォーマンスで締め括れた達成感、順位決定戦1着には惜しくも届かなかった悔しさ、これで現役生活が終わってしまうんだという寂しさ。こんなに様々な感情でもって心躍る体験をさせてくれたボートに出会えて良かったと、心から思いました。
それだけでなく、先輩方が不甲斐ない自分のことをずっと応援してくださっていたこと、後輩達が自分の引退を悲しんで涙してくれたことが、本当に嬉しかった。インカレ・全日本最終日は、僕にとって大変幸せな1日となりました。
確かに長くて辛い現役生活だったけど、これまで感じてきた苦しみはこの幸せを噛み締めるための伏線だったんだと、強く思いました。
地元や学校の友達との遊び、好きだったアイドルのライブにも行かず練習しても、中々思うような結果が出ず、何度も不満を募らせました。しかし、途中で投げ出して一生後悔したくないという自分の意地と、どんなに結果が出ない時でも応援してくれる人達の声を力に変え、苦しみに耐えながらがむしゃらにボートと向き合い続けたあの日々は、決して間違ってなかったと断言できます。
そして現役生活を終えた今、僕が後輩達に伝えたいことは、
「前向きに地道に歩み続けて欲しい」
ということです。
人と比較されるスポーツの世界では、勝者がいれば必ず敗者もいます。どこかで自分の力が及ばず、敗北という現実を突きつけられるでしょう。また、普段何気ない日常を過ごしていても、何故だか何もうまくいかず、嫌になってしまうこともあるでしょう。
そういった時に、その悔しさや辛さと向き合い、一歩ずつ階段を登っていってほしい。昨日とは違う自分になっていってほしい。急がなくてもいい。誰かの力を借りたっていい。時には一旦忘れたり休んだりしてもいいから、いずれまた歩き出せばいい。
そうした地道な努力がいつしか大きな成果となって実を結んだとき、あの時頑張って良かったなと思う日がきっと来るはずです。いつの日か、そんな思いで満ち溢れた皆んなに会えるのを楽しみにしています。
次の世代を担う後輩達は、間違いなく強いです。
圧倒的なフィジカル、技術、謙虚さを持ち合わせた3年生。
人数が少ないながらも上位クルーで確実に成長している2年生。
ポテンシャルと元気の塊で、上級生を下から突き上げていけるパワーを持つ1年生。
これほどまでに頼もしい後輩達を僕は知りません。
頑張ってください。力の限り応援します。
(新たな名動画誕生の瞬間も楽しみにしてます。)
最後になりますが、現役生活を長きに渡って支えて下さった監督・コーチの方々、高校ボート部の先生方、先輩方、同期・後輩達、両親と祖父母、ボート競技で関わった全ての方々に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
132期
田上諒
たのたるお疲れ様でした