こんにちは、128期主将の内田優志です。
前回のライフはお休みしてしまい申し訳ありませんでした。
本当のラストライフは引退直後に書く予定ですが、今回がラストライフのつもりで頑張って書きます。
今村君が努力について書いていましたが、いかに彼が努力をしてきのかがわかる素晴らしいライフでしたネ。
さて、僕のラストは少しばかり自分の考えを書こうと思います。
いきなりですが、皆さんは今までの人生にどのような想いをいだいているでしょうか?
僕はボートを7年間やってきましたが、夢だったインカレでの金メダルや早慶戦6連覇を達成することができませんでした。そしてキャプテンとして勝どきを揚げ、部を盛り上げることが出来なかったことが何より悔しいです。(全日本では必ず勝ちますが)
人生で何か成し遂げたいと思ったとき、その結果がたまに上手くいくこともありますが、上手くいかないことがほとんどだと思います。
上手くいく時といかない時の差は何なのか、これがわかれば人生に苦労することはないではないかと思ってしまいますが、おそらくそれをわかっている人はこの世にあまりいないでしょう。
そんなことをぼんやり考えていた時、僕の趣味である将棋の動画を見ていたら、将棋界の巨匠=羽生善治さんの考え方を見つけました。
そこではこんなことが言われていました。プロ棋士は将棋というゲームにおいて、「3手の読み」と「大局観」によって良い手を選び、決断をして勝利を目指していると。
将棋というゲームは、相手の玉を先に詰ます(先に玉を捕まえる)ことが出来れば勝ち、出来なければ負けという玉の人生を懸けたゲームです。相手の玉を詰ますために相手と交代で一手ずつ駒を動かしていくわけですが、どのような考えに基づいて駒を動かしていけばいいのかこれが難しさでもあり醍醐味でもあります。
しかし、艇庫の住民の皆さんは将棋について興味があまりないようなので、この「3手の読み」と「大局観」についてボートを例にとって説明します。
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「3手の読み」というのは、いくつかの選択肢が与えられた時にAをすることによってどのような変化が得られるかをわかりやすく考える方法です。
例えば、冬の日の朝に雨が降っていたとしてその日の練習をどうするかといったときに、
「予定通りコースで乗艇練習をする」「エルゴの練習に変更する」という2つの選択肢があるとします。その時に行われる「3手の読み」は
・コースで練習→雨の中漕ぐ→クルーが成長する ※ただし、風邪をひくリスクがある
・エルゴに変更→エルゴを頑張る→個人の体力が上がる ※ただし、艇に触ることはできない
大雑把にこのような比較をして、どちらかを選択をする。これが「3手の読み」の使い方です。
我々は無意識のうちにこのような「3手の読み」を使って様々な選択・決断をしていますが、時には「3手の読み」では決断ができない状況(例えば月や年単位など長いスパンを考える時、完全に迷ってしまった時など)が現れます。
その時に登場するのが「大局観」です。
「大局観」は言ってしまえばセンスと同じで、その時にどのような選択をしたら上手くいくのかを幅広い視野を持って直観的に判断する能力です。ボートで例えるなら、様々なトライをしても調子が上がらない時に、あえて全然違う練習をしようと考えたり、このままだと勝ちが見込めない時にリスクをとってでも予定を変更し、勝負をしたりするときに自然と使われています。これが「大局観」の使い方です。
単純に言うと、この「3手の読み」と「大局観」の使い方が正確だからこそ羽生さんは強いと言えます。
もちろん、この2つの方法を使いこなすにはたゆまぬ努力によって鍛え上げられた豊富な経験と、自分の直観を疑い続け幅広い大局観を持とうとする精神が必要です。
※ちなみに動画では、「3手の読み」と「大局観」を使って世の中にあるたくさんの情報やアイデア、選択肢を見極め、自分の選択に自信を持って生きて下さいと締めくくられていました。
さて、ここからは自分の考えを書きます。
動画ではさらっと「3手の読み」と「大局観」を使って下さいと言っていましたが、どうしたら正確に使えるようになるのかさっぱりわかりません。
そこでこの2つの方法を使いこなす羽生さんのような勝負に強い人間はどのようにして誕生するのかについて僕は考えました。
そして出た答えは、物事を本気で好きになり、熱い情熱をかけ続けることができる才能を持った人が勝つ、つまり物事に対し、「最後まで楽しみ続けられる」人間が勝つということです。
なんて偉そうに書いてしまいましたが、物事を本気で好きになるというのはなかなか難しいと思っています。
本気で好きになるという感覚は人それぞれだと思いますが、羽生さんは寝ている間も車を運転している間もずっと将棋のことを考えてしまうほど将棋が好きだそうです。(だから車の運転は危険なので出来ないらしいです)
今思えば僕は羽生さん程までボートを好きになれなかった、むしろ早慶戦もインカレもキャプテンとして絶対に勝たせなきゃいけないというプレッシャーの中で少し堅くなりながらボートをしていたなと思います。ボートが好きで好きでただ純粋に楽しみたいという熱い情熱だけを持って生きていたら今の慶応端艇部はどのようになっていたのでしょう。
しかしそのことが分かった今、残りのボートライフをどれだけ充実したものにできるかは、頭の中をどれだけボートで埋め尽くせるかだけの勝負だと思っています。
そして自分の好きなことが想い存分にできる環境を作ってくれている、三田漕艇倶楽部の皆様を始めとしたOB・OGの皆様、そして両親、自分のわがままを聞いてくれた部員の皆に、自分が最高に幸せであることを勝利という形で感謝を伝え、喜びを分かち合いたいと思います。
長くなってしまいましたが、僕がボートを7年間続けて肌で感じ取った勝負の難しさは、「楽しむ」ことで道が開けるかもしれないとう結論に至りました。
全然大したことではなかったですね。。笑
それでは皆さん、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
以上でお別れとなります。4年間ご支援ご声援本当にありがとうございました。
次は、志木高時代から助け合ってきた主務の宇津木君です。
文:内田優志